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2008年12月 9日 (火曜日)

【クルマ】GTRに乗り、大いに考えさせられる。

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某日、冬晴れの好天に恵まれた群馬で、オーナーのご好意によってGTRを試乗する機会を得た。クルマ好きならば、一度はそのハンドルを握ってみたいと思う国産ハイパースポーツが今まで乗ってきたアストンやガヤルド、R8、997ターボとなにが違うのかを考えさせられる一日になった。

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オーナーとの待ち合わせは、いつもお世話になっているJファクトリー。M店長の愛車のブルーのTTSが溶け込むほどの抜けるような青空が広がる。

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2ndTTが並ぶ駐車スペースだけに、めったにこの店では見ることの無い国産スポーツカーが異彩を放つ。テールのボリューム感はZ06的な印象だ。鍵はオーナーのポケットに入ったまま、ドライバーズシートに乗り込む。

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このモデルからスカイラインという接頭語句はなくなったけれど、ドアを開けた瞬間に感じるスカイライン的なマッチョなインパネが目に飛び込んできた。

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なんて説明していいか戸惑うぐらいに日産的なステアリングのデザイン。パーポスカーとしてプロユースな道具がもつ質実剛健なたたずまいは、それこそ戦車や装甲車などと同じカテゴリーのデザインに感じる。それは最近のティアラとかマーチ、TIDAで魅せるモダンファニチャー的なNISSANデザインとは明らかに違うオーセンティックな「日産」テイストだ。

自分は物心付いてから実家を出るまでの20年近く、父の仕事の関係で日産車しかのってこなかったからこの独特な味が懐かしいと感じてしまうのだけれど(笑)

スターターボタンを押す前に、ドライビングポジションをあわせる。シートは比較的座面がフラットだけれども、ちょっとやわらかめで座ると少し沈みこむ感じだ。サイドのサポートは緩めだから、圧迫感は無い。

チルト&テレスコのステアリングは、現行フェアレディZと同じメーターナセルごと上下するタイプ。一緒に動くことで、ステアリングとメーターナセルと目の位置の角度が変えらないから自分は苦手だ。

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メーターの意匠はタコメーターとスピードメーターが逆回りに回るアストンティックなつくりなのだけれど、アストンのようなメタリックでメカニックな印象はうけず周囲のメーターナセルのプラスティックな感触とちぐはぐ感は否めない。そもそも、なんでメーターバイザーは弧を描いているのに、ナセル全体は長方形なんだろう?デザイナーの意図がなにだったのだろうか?

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助手席の前のダッシュボードのデザインもなんだか不思議な感じだった。この吹き出し口はなんで横スリットがデザインの基調になってるのだろう? 革の質感もダッシュボードのシボも悪くないのに高級感や上質感に程遠いのはなぜだろう?

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センターコンソール回りも長方形多様されていてそれを見ていて、はたと気がついた。

デザイナーの意図は、もしや計器パネルなんじゃないだろうか。対地攻撃ヘリや戦闘機といったウエポンの操縦席テイスト。四角のパネルの中に丸い計器やノブのレイアウトもふくめそう考えると上質感とは無縁なことも合点がいく。ナビだけでなく、さまざまな走行データや車両情報を表示する液晶パネルも同様。

すっきりとした気持ちで、センターコンソールのスターターボタンを押すと短いクランキングの後、ヴォーンというブリッピングでエンジンは目覚めた。エクゾーストは4本だしであの太さとは思えない大人しい音だった。ツインクラッチのミッションはDSGと同様の弱めのクリープをちゃんと作り出してくれるから、アクセルを踏むことなくゆっくりとクリープだけで走り出す。

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Jファクトリの裏口的な出入り口は、斜度がきつくまっすぐ降りると顎を吸ってしまうのだけれど、GTRは日本車としての気配りが効いていて、見た目の印象とは裏腹に顎をすることもなくすんなり通過。オーナーいわく、フロントよりもリアのマフラー回りにクリアランスが無いとのこと。

アクセルを踏み出して驚くのは、雑誌などで再三書かれていた「軽さ」だ。単にボディが軽く感じるというだけでない、ミッションを含めた基幹系のフリクションの少なさも含めた軽さを感じた。これは足回りも同様で無駄な慣性力が微塵も感じられない。マンホールやギャップの突き上げがあっても、ボディがあがって降りる1/2サイクルで収束。大人3人がのって2tぐらいの重量があるとはまったく感じられない。

まっすぐで長い一本道の農道に出たので、パドルを使ってシフトダウンしスロットルを踏み込んでみる。ターボラグはほとんど感じられずビューっというV6らしい軽い排気音とともにぐんぐん加速していく。4駆らしいトラクションで無駄なく前に進む、この加速感はなにかに似てるなーって思いつつ、ワインディングへ。

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GTRには、狭いですねーってちょっと心配されたけれど、面白いように頭が入るからまるで5ナンバーのクルマに乗ってるようなそんな気分で3~4速でクルクルと峠を上る。この峠道は以前JファクのケイマンSや自分のTTでも走ったことがあるが、そのどれよりも軽快かつ安定していた。試乗したGTRは納車時についていたタイヤを使い切ったオーナーが専用のスタッドレスである「ブリザック LM25 RFT」に履き替えていたので、荒れた路面でパワーをかけたときにちょっとだけリアタイヤが腰砕けになってばたついたけれど、それもVDCで瞬時にコントロールされた。

ちなみにこのタイヤは、GTR専用でSOTTOZERO同様にZR規格のもの。ドライのグリップについてだけ言えばSOTTOZEROのほうが断然いいと思う(笑)。

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峠道の下りに入ってブレーキの効きと効き味もすばらしかった。リニアな効き味で、ちょっと加重をフロントに乗せようとしたりするのも簡単。ペダルの剛性感も十分。オーナーは、ブレーキペダルが右よりで左足ブレーキを使いづらいといわれていたけれど、普段輸入車の窮屈なペダルポジションの右ハンドルに乗る機会が多い自分にとっては、これでも十分踏みやすい(笑)

ワインディングの後は、高速道路へ。

料金所から合流ランプへの離陸は力強い加速というよりは、飛びたつような加速感。これは先日乗ったRS6とも違う感触だった。RS6が3t近い重量を馬力とトラクションで強引に引きずり上げるような加速だったのに比べ、前述の軽いという印象がここでも感じられたのだ。

「480ps/6400rpm 60.0kgm/3200-5200rpm 0- 100km/h加速:3.6秒 最高速度:310km/h」というスペックはタイヤがスタッドレスということもあってやや落ちていただろうけれど、それでも4秒程度で時速100kmに達しただろう。そのままワープ速度に入りたいと思ったけれど、このクルマはワープできない惑星間宇宙船だった(笑)

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オーナーいわく「筑波のバックストレートでさえリミッターにあたる」らしい。いつも思うことだけれど、国産メーカーの自主規制の180kmというのは、なんの意味と根拠があるのだろうか?180kmなら安全でそれ以上は危険っていうわけで線引きされてはないだろうし、日本の法廷速度は100kmまでなわけだから、法令順守ならばトラックのリミッター同様に100kmじゃなきゃおかしい。ほんと誰がなんのメリットの元にやってることなのか聞きたいと思う。

余談だけれど、運転中操作できないナビも同様。

知り合いのドイツ人は運転中にナビ使えないと知って、高速道路ではサービスエリアに着くまで目的地の変更とかできないのか?!って真顔で怒ってた(笑)。高速道路走行中に目的地を変えなければならないときは、本線車道賞は駐停車禁止なわけだから次のSAかPAまで通り過ぎるしかない。まったくナンセンス。運転中にナビの操作したら危険なんていいだしたらラジオなどのオーディオはもちろんエアコンの操作だって危険じゃないか?

彼の言うことはドイツ人らしく理路整然としている(笑)。

不完全燃焼な亜高速巡航のあと、昼食場所に到着した。

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群馬名物のソースカツ丼発祥の店「志多美屋」。大正末期創業だからすでに80年を越える老舗。

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写真手前がロースかつ丼、奥に見えるのがヒレカツ。ソースはさっぱりとしたウスター系でソースカツ丼にありがちなこってり感は少なく食べやすかった。ランチの後は、オーナーみずからの運転で振り出しに戻る。

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後席のクア太郎さんからなかなか鋭い質問が出た。

「このクルマのカテゴリってどう感じますか?」

運転している間、ずーっと自分でも自問自答していたことだった。オーナーの運転している様子と助手席にのっていて、かつてこれと同じ感触をもったクルマがなにだったか思い出した。

「すごく大枠でくくって、ランエボと同じカテゴリでクラス違いといった感じかなー」

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確かに、こういうホイールハウス周りのデザインもよく見ればランエボテイストだけれど、決してそんな外見で行ったわけで無い。

それは、このクルマが速いこと意外に魅力が無い(オーナーさんごめん)と感じたからだ。 ランエボもそうだけれど、どうしても凄いとか速いとかそういう形容詞でしか語れない。そういう意味で日本車の王道。実直で生真面目な技術屋がつくる最高のメカニズムの集合体、ある意味レーシングマシンと同じ。ニュルブルリンクでホームのポルシェに勝ち、0-100kmのスペックで巷のランボやフェラーリに勝つための凄いメカ。

人間もそうだけれど凄い人とか強い人ってのは、その人の魅力ではなくその人の能力でしかない。人間としての魅力は、その能力の外側にある。日本の自動車メーカーはそれを学ぶ必要があるし、それが日本車が普及車だけで上級レイヤーに進めない根源だと気づくべきだとおもう。

AudiのR8RS4に乗って無機質な加速感だとかエモーションが少ないだの行ってきたけれどGTRに比べればはるかに汗臭くエモーショナルだったと気づいた(笑)。それこそRS6なんてもうベタベタでヌルヌルにバタ臭く体臭がある(笑)

ちなみにインプレッサもこのカテゴリにいるかといえば、私は違うと思う。

インプレッサは速さとは別のファントゥな要素がある。アイドリングしているときや低回転で流しているときでも、あのボクサーエンジンの音は味わい深くて楽しい。そういう観点で見てインプレッサには体温もあれば体臭もある(笑)

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残念だけれどもランエボやGTRにはそういう楽しみはない。低回転で流しているときに実感するのは、このクルマは低速トルクがあるな~、この回転からノンスナッチで加速しても、ほとんどのクルマには負けないなーという勝利の意識のみだろう(笑)

自分もかつては、そういうクルマが大好きだったと思う。でも、年を経て海外の体臭の強いクルマたちと接するうちに趣味嗜好が変わってしまったようで、今の自分には、このクルマに乗って矢のような加速を体感しても凄いクルマだと驚愕するだけで、残念ながらそれ以上の感情の高まりは感じられなかった。

速いこと、凄いことがアイデンティなGTRやランエボが日本のクルマ文化の象徴であることは間違いない。でも、現実には180kmのリミッターで去勢されて、半分ほどの馬力しかないゴルフやC200コンプレッサーあたりにもヌルヌルと抜かれてしまう現実もある。

日本のクルマづくりがどこか成熟しきれないのは、きっとこの子供じみた建前だけの自主規制とかの歪みが影響していると思う。

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Jファクで解散したあと、北関東道を走っていると偶然にも3台のスーパーカーに出会った。LP500、ムルシー、F40(黄色のムルシーの前に居た)。ワープ速度どころか、GTRのリミッター速度よりも低い速度で彼らは走っていたけれど、遠くまで響く爆音と走る姿には、わくわくする何かがあるのだ。きっとドライバーもこの速度で走ってても楽しいに違いないし、GTRが自分たちよりはるかに速いことなんて、このクルマのオーナーたちにはまったく無意味にちがいない。

このスーパーカーの後ろを走りながら、どうしたら日本のメーカーが速さとかスペックとかの勝ち負けにこだわらない、走っても停まっても魅力を感じるスポーツカーがつくれるようになるのだろうか・・・と大いに考えさせられた試乗だった。

最後に、このような貴重な機会を与えてくださったGTRオーナーのR氏と友人のクア太郎くんに深謝。

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コメント

川添さん、コメントありがとうございます。
よく出来たクルマだというのは、私も同感です。好き嫌いは別として、本当にメカニズムは良く出来てると
女性に例えるのは不謹慎ですけど、欠点がほとんどない器量よしですよね。学級委員みたいな。

で、問題は、愛せるかどうか。

残念だけど、私には愛せないし、そういう魅力はどこにも見つけられませんでした。
欠点がない器量よしなんだよ、ニュルで最速なんだよって自慢できるだけで幸せにはなれないので。

投稿: ta_tsu | 2014年1月 8日 (水曜日) 19:06

随分昔の記事ですので、今現在これを送ってどうなることかは解りませんが・・・(笑)
GTRには、知人のものと店舗の試乗車にしか乗ったことがないのですが、良くできたクルマだなあ…と。
私は以前、R32スカイラインGTーRに乗っていましたが、あんなに酷評された新型のR33GTーRと乗り比べると、やはり旧型であると思わざるを得ませんでした。その事は、33と34でも同じで、速さで言うと、新型の方が圧倒的に速く、操作性も間違いなく勝っているのが当たり前なのだと思っています。
同じ意味でこのGTRはとても良くできていると思います。
但し、価格も含め、乗りたいかと言うと、そんなに乗りたくもありません。
同じ様な金額を出せば、もっと他の車を選べますし、もっと楽しく乗れるとも思います。
運転席に座って聴こえてくる音が、作り物のようにも思えて、その事も気に入らなかった理由のひとつかも知れません。
結局、その頃に購入を考え直したことは正しかったと思います。

投稿: 川添 規正 | 2014年1月 5日 (日曜日) 10:59

959はポルシェの先端開発でしたね。あのときの4WD技術があって、今の997のカレラ4Sがありますから。ただ、GTRのそれは993カレラ2の人が959よりカレラ2が良いというのとは違うレイヤーだと感じてます。

日ごろクールで無味無臭だと思っていたアウディでさえ、GTRに比べたらエモーショナルに感じますから。

GTRの技術をフィードバックできたあと、技術以外の魅力を持つクルマを生み出せるかが鍵になると思います。

投稿: ta_tsu | 2008年12月10日 (水曜日) 01:23

ご無沙汰してます。
思うにR35GT-Rはポルシェ959とかなり背景が似ているん
じゃないかと。
959の大義名分はグループBでしたが
水冷化・AWD等々後の911を先取りしていましたし。
所謂911ファンの959評も「速いよね(でも911の方が良いよ)」と当時も今もそっくり。
R35開発責任者が発表当時から他の日産車に
技術ノウハウを移転すると公言してましたから
これから先が楽しみですね。
ただR32GT-R開発時の参考車が959だったというのは
皮肉ではあります(笑


投稿: wadia | 2008年12月 9日 (火曜日) 22:51

クア太郎さん、コメントありがとうございます。そして今回のような稀有な機会を与えてくださってありがとうございました。

GTRは、とにかく勝ちたい人のマシンだと思います。天候にも気候にも負けず、ポルシェにも負けず、フェラーリやランボルギーニにも負けない。メーカーもそのために惜しみなく技術をつぎ込む。基本的にレーシングマシンなフィロソフィー。担当者もレーシングマシンの開発者だったから当然ですし。

今日、発表されましたけれど09モデルは、いろいろと細かく変更くわわって馬力も5PSアップだとか。こうしてMYごとにブラッシュアップしていくあたりも常に勝ち続けるレースカーだなと。

さしづめ自動車界のレーザーレーサーでしょうねー。

投稿: ta_tsu | 2008年12月 9日 (火曜日) 17:13

特に車に詳しくない私ですので、漠然と感じていることをコメントしますと…

『GT-Rと,その他のスーパースポーツカーとの違い』を、
『初代TTと,二代目TTとの違い』に置き換えて解釈してます。
(次元が違う話なので、善意で解釈してください。)

私はサーキットへ行ったり、峠を頻繁に走るようなタイプではないので、
普段の用途で考えるしかないのですが…
・悪天候の中、急いで現地へ向かう必要があるならTT2nd3.2Qを選びます。
走行性能は初代よりも格段に良いわけですから、早く安全に現地に着けまし…
・別に急ぐ必要も無く、なんとなく走りたいときはTT1st3.2Qを選びます。
エンジン音,変速時の過剰なフォン!という演出音,インテリアなどなど…
クールな二代目には無い味わいが初代にはあると思います。

mixiのTTコミュの『初代と二代目どちらが良いか?』という話にも通じるのですが、『

どちらが良いか?』では無く、『どちらの特性が必要か?好みか?』ということかな~

と…

とにかくサーキットで速く走りたい方や、どんな悪天候でも現地に安全に早く着きたい方には

GT-Rがお勧めなのでしょうし、速さを少し削っても,価格が高額になってでも他の何か

が欲しい方はGT-R以外の車を選ぶことになるのかな~と…

中途半端なコメントですが、一応フォローさせてもらいました。

投稿: クア太郎 | 2008年12月 9日 (火曜日) 16:33

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