【クルマ】RS4AVに乗る。感服する。
落ち着いた色見の外装にあわせた内装は、コンフォートパッケージのシルクナッパにブラックのパイピングの入った本革シート。
このシートは初めて見たけれど、座った感じも含め前オールロードのシートに近い印象。もちろん、オールロードよりサイドサポートは固めで張り出していて体のサポートはしっかりしていた。
ドアトリムにもシルクナッパが張られて、いにしえの英国車みたいなレトロテイストの質感を与えてるが、惜しむらくは、ダッシュボードがモノトーンなこと。
ダッシュボードの下半分もシルクナッパだったら、マセラティなみだっただけに・・・・ちょっと残念。
RS4のアイコンともいえるフラットボトムのステアリング。よーく見ると、ボトム部分のRSバッジが無い!!。信じられないことだけれど、ここに来る前の試乗で、無理やりバッジを引き剥がして盗んだ輩がいるらしい。
走行距離は1324km。かろうじて慣らし終了ってところかな(笑)
キーを挿してスターターボタンを押すと、ちょっと長めのクランキングの後、ヴゥォンという低い始動音でエンジンは目覚めた。太くて短いシフトレバーを握ってクラッチを切る・・・・軽いっ!。いま販売されている400PSオーバーのMT車では、一番軽いんじゃないだろうか。
最近のAudi車にはMTが無いから比較しにくいけど、当日自分が乗っていった初代TTR並みに感じた。
クラッチを切ってシフトをローに・・・・これまた軽い!見た目からして、987ボクスターのショートシフトつきの感触を想像していたのだけれど、見事に裏切られた。シフトレバーの質感そのものが軽い。ストロークも見た目とは裏腹に長い。
金属のノブ部分が短いから、短く見えたけれど、よく見ればブーツの中に隠れるレバーは短くない。レバー比が大きくてシフトが軽いので、シフトノブも大きさほどの質量がいらず、軽い頭がついてるって感触だ。
自分はレバー比の低いショートシフトに重めのシフトノブがついて、その重さの慣性を使って、ギアを放り込む感触が好きなので、これはちょっと残念だった。
ローに入れて軽くレーシングしてみると吹けあがりはダブルマスのフライホイールっぽい重めな吹き上がりで、これはV8らしい感じ。ただ排気音はドロドロというよりもう少し乾いたドコドコと聞こえる。S6やS8のV10のほうがドロドロ感が強かった。
拍子抜けするぐらい軽いクラッチだけれどミートポイントが上目なので、重さの割には渋滞で足が疲れるかもしれないし、MTに不慣れな人が軽さに油断してると、エンストしやすいかもしれない。基本どおりアイドリングでゆっくりつなげば、4.2Lのロングストロークエンジンのトルクは太く、するするとスタートする。
ディーラーの駐車場から国道に出るときに、ステアリングの軽さを実感。切はじめからきってる最中も同じように軽いので、タイヤの太さをまったく感じさせない。アシストが強力で軽いだけでなく、ステアリングギア比も直径から感じるよりも大きく感じた。この大きさだとZ4Mぐらいの高いステアリングギア比がほしい。
高速のICまでは、ノーマルモードで流す。音は軽いけれどトルクは太く、4~5速入れっぱなしのAT運転でOK。
途中Sモードにしてみたけれど、3000回転あたりまでしか回さない街中では、BMWのSPORTSスイッチやポルシェのスポーツクロノに比べると控え目な演出で、意識させられるのはエクゾーストのバルブが開いてちょっと大き口を開いたような音だけ。このシートには、標準シートについてるサポートがしまるような仕掛けはない。アクセルレスポンスも変わってるはずだけれど回転数をみてるらしく、Sモードいれてもスポーツクロノみたいに速度があがるようなことは無い。
Sモードのまま高速道路へ。料金所のゲートを出てフル加速を試みるとSモードの醍醐味が4000回転以上にあることがわかった。何度か入れたりきったりして比較したけれど、ポルシェやBMWのバリオカムプラスのようなバルブリフト量があきらかにノーマルと変わる感じだ。ただ、これもライバルにくらべると控えめ。
ポルシェやBMWのMのような理性を持って行かれるほどの野性的な豹変には至らない。でも速い!。S8の滑空するような速さとも、S6の力技の速さともちがう、ボディが軽いと錯覚させる敏捷性をともなう速さ。
1.8tぐらいの車重になれば、ステアリングの切り返しやアクセルオンオフの荷重移動にあわせてワンテンポたまるようなボディの動きがでるのだけれど、これがまったく無い。従来なら、こういう動きをさせるためにはショックとスプリングを固めないといけなかったので、その代償として乗り心地が固くゴツゴツになった(S6がまさにその感じ)けれど、このクルマは違う。乗り心地はエアサスなみにいい。
足回りのDSCが効いてるから、ブレーキングやレーンチェンジしても前後左右に生じるクルマの慣性モーメントを感じさせず、ステアリング、ブレーキタッチ、アクセル、シフト、クラッチの軽さとあわさって、まるで1tぐらいしかない車を運転しているような錯覚に陥いってしまう。エンジンも4.2Lのロングストロークエンジンではなく、その半分の排気量に感じさせるぐらい軽くストレスなく回るので、ますますその印象はつよまる。
おそらく、Audiのエンジニアたちは一階級下の軽さに感じさせることを、RS4のキャラクタとして求めたにちがいない。エクシージみたいな動きとでいうのかな。ダイナミックにサスを制御するS8のエアサスや新型TTのマグネティックライドとも違う方向性だ。
S8とは違った乗り心地のよさ軽快さを実感しながら、5分もかからずに隣のICに到達した。絶対的な加速力と速さはS8に若干及ばないけれど、レーンチェンジの小気味よさはS8には無い魅力。これならワインディングに持ち込んでも、このクルマは侮れない動きをしそうだ。
岩槻IC出口のゲートをでて、再び入り口方向にUターンする側道の180度ターンするコーナーで、フロントヘビーなクルマに辛いちょっと意地悪なラインをとってみたら、案の定軽さのギミックが剥がれてフロントタイヤがスキッド。アンダーステアを出すためのドライバーの確信犯的行動に、ESPがすかさず介入。左フロントと右リアにABSが効くまでブレーキングをかけて修正してくれた(苦笑)。
フロントが軽ければ、あのラインはFR的な駆動配分を生かしてテールを外に振って頭が回り込めたはずなのだけれど、やはりフロントヘビーな挙動を見せた。これは結構要注意な部分。峠とかで不用意ラインを深めにとりすぎてハンドルをこじったりするとヤバイ。
ちなみに、こんなことがさらっと出来るようになったのも、先日の壺塾のおかげ(壺林さんに深謝)
もちろんESPによってABSがガツガツ効かされて向きを変えられても姿勢は乱れず、スロットルの虚勢も従来のAudiテイストよりはるかに少なめだから、何事もなかったかのようにターンアウトして、ICの入り口に向かう。帰り道は交通量が少ないこともあって、レッドゾーン間近までしっかり引っ張れた。エンジン音は、チューンドならではの滑らかで軽やかに吹き上がる。
途中ふわーっと走行車線から出てくる車がいて、車間距離220mあたりからフルブレーキングをガッツりかける機会が何度かあったけれど、8ポッドの威力は絶大で、かつブレーキングのノーズダイブがDRCで抑制されノーズダイブなし。S8のCCBのような減速Gにはいたらないけれど、まったく不安はない。
あっという間に浦和ICに到着。料金所を抜けて、ふとインパネを見たら油温がえらいことになってた!!写真は料金所を出て次の信号で止まったときにとったので115℃だけど料金所で見たときは120℃だった。NAでこの油音はかなり高い。ターボ並み。
あわせて燃費も4.5km/Lってのもすごい。うちのZ8がSPORTSモードにしてパノラマライン爆走しても5.5km程度だし、先日のATのS6、S8も5kmぐらいだったので、これはかなり大ぐらいだ。
FSIは従来のエンジンに比べ発熱量が高くなるという話を聞いた記憶があるので、燃料冷却として濃い目に噴射しているのかもしれない。
20分ほどの試乗を終えて、駐車場について車から降りて気がついた・・・乗ってたのってアバントだったんだっけ!!。運転しているときにはまったく意識させられなかった。うーん恐るべしDRC!!。3年前に試乗したRS6に比べ、かなり進化したことを実感させられた。
試乗してみて、A3SBよりも軽く機敏に感じさせてしまうこのクルマのポテンシャルの高さには、深く感服させられるけれど、自分の好みとしてこの軽さは、なじみにくい。
まるでアーケードゲームのステアリングモジュールを扱っているようなフリクションの薄い軽さは、完成度の次元が異なるとはいえ、三菱のランエボと酷似していると思う。それは軽い車なのに重い操作系をもつロータスヨーロッパSや、スムーズに走るけどロードインフォメーションを容赦なくドライバーに伝えて判断を迫る911C4Sとは対極。どちらを選ぶかはドライバーの嗜好次第で、RS4はイージーで速くて安全なことのプライオリティが高く、スポーツドライビングのスキルアップは目的ではないドライバーには、ベストチョイスだとおもう。もちろん、高いスキルの人が乗ればこのクルマは十分に速いということは間違いないし、ユーティリティも含めたコストパフォーマンスを考えたらかなりお買い得だとも思う。
乗り終えたあとディーラーのスタッフと前RS4のビギナーを拒絶するような、なにからなにまでヘビーでスパルタンな乗り味を懐かしく話してしまったのだけれど、そんな懐古主義にいたってしまうのは、完全ジジイ道に入った証拠だな(苦笑)
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コメント
moutonさん>
S4との比較って全然念頭に無かったですね・・・忘れてました。あらためて自分のインプレッションをみると、04モデルは好意的、05モデルは×ですね(笑)。RS4の軽さは、なんだか新しい乗り物って感じでした。以前moutonさんが話していた、空から誰かがつっているかのごとく、ってのは言い得て妙だと思います。車両に重力を軽減する反重力デバイスがついてるとでもいうのかな。
そのボディにはあのエンジンのキャラクタがぴったりだとは思います。でも、正直、このクルマのキャラクタだとMTである意味は、私には感じられませんでした。S6やS8と同じようにパドルつきATもしくは、Sトロニックが乗るべきかと。パドルだけで走るほうが楽しそうだったので。
RS4の金額と利便性を考えると、S6を買う理由は自分には皆無ですね。インテリアも今回のコンフォートパッケージを組めば全然いいですし。とはいえATが無いのでかえないですけどね;;
torajiroさん>
996GT3は、現行997GT3よりもクラッチ重いんですよ。しかも993RSよりも重いらしい。なのでおそらく今乗れるポルシェの中で一番クラッチが重いのではないかと思います。
イージーで速いRS4は、Audiらしさの象徴的なスマートでクールなクルマ。体育会系のM3や911の対極です。なのでMTがなんだかミスマッチに思えちゃいました。2ペダルMTがキャラクタにはあってますね。M5やM6がSMGであるのと同じ。逆にRS4に乗ったら、M5やM6はやっぱりMTにすべきだと思いました。BMWは汗して乗るのが似合うし楽しめるクルマだから(笑)。
ちなみにAMGとかは2ペダルMTではなく、旧来のトルコンとかCVTが似合う車かな(笑)
投稿: ta_tsu | 2007年6月10日 (日曜日) 13:04
短時間試乗でここまで書けることに感服いたします。
S4から乗り換えたので、軽さ対する抵抗はありませんが、骨太感はS4よりずっとあり、旧型のS8に似ているか、それ以上と感じました。
ステアリング・インフォメーションもS4より上質でいて、雑味が排された綺麗なものに感じます(笑)。
S4、S6で感じたフロントへヴィな詰んのめり感は、DRCのお陰でリアへの加重移動が楽に行われるのでそれほど気になりません。積極的にリアに加重する走りが面白い車です。
正直、S4とは別物に仕上がってるなーと思いました。FR的な走りを意識させる部分は今までのアウディの感覚とはちょっと違って新鮮。なんといってもMTで操るエンジンが愉しいです。高いか安いかはまた別の問題として(笑)。
今度はうちのセダン乗ってみてください。
投稿: mouton | 2007年6月10日 (日曜日) 10:58
>スムーズに走るけどロードインフォメーションを容赦なくドライバーに伝えて判断を迫る911C4Sとは対極
以前初期型の996GT3運転させてもらって
RS4に乗り換えた時にまさにそう思いました
クラッチ等全ての操作系がめちゃ軽かったです(笑)
>イージーで速い・・
僕にぴったり(笑)
投稿: torajiro | 2007年6月10日 (日曜日) 10:50