【クルマ】アストンマーティンV8ヴァンテージに乗る。
アストンマーティンといえば、子供のころから大好きで見ていた映画007シリーズで、たびたび出てくるスノップでクールなスポーツカーだった。子供ごころにいつかは乗ってみたいと思ったものだった。
しかし物心つくと、この車が相当に高価なものだと知り、それは自分には縁もゆかりもない夢の車だと落胆した。
あれから30余年たってZ8に惚れたのも、どこかであのアストンとの相似性を感じていたからかもしれない。とはいえ知人に教えられるまではZ8のデザイナーが、ヴァンキッシュやDB9、ヴァンテージと同じだということは、まったく知らなかったので、知らず知らずのうちに憧憬してきた車に一歩づつ近づいてたのか。
そして、よいよアストンマーティンに乗る機会を得た。Z8の時にも憧れの君とのデートと書いたけれど、これまた憧れの君とのデート第2弾となった。
猛牛の試乗を終えて10分ほどで目的地に到着。ディーラーの裏手にある駐車場にいくと、そこには目の覚めるようなブルーメタリックのヴァンテージが止まっているではないか。
試乗車なのか、たまたまきている客の車なのか。
それにしてもマッシブなボディラインは、一分の隙もなく美しい。アストンでは、はじめて見る色ということもあり、しばしガン見してしまう。ブルーのクーペにはどうも弱い(笑)。
とりあえず隣にZ8を並べて停めて見比べてみる。
贔屓目があるとしても、やはり両者は同じトーンマナーを持っていると感じた。車を停めショールームへ。前日メールでやり取りをしていた営業担当のK氏に挨拶をすると「裏のブルーのヴァンテージはご覧になられましたか?。MTの試乗車があったほうがいいかと思いまして急遽ご用意いたしました」
2ペダルATの試乗車しかないと聞いていたから、これはうれしいサプライズだ。なんとも手回しのいいこと。さっそくキーを受け取ってブルーのヴァンテージの扉を開けた。
以前OGさんのBLOGで、イギリス車のかほりという話が合ったけれど、この車、間違いなくそのかほりがした。
友人が以前乗っていたダイムラーのダブル6や、イギリス製の家具やオーディオの箱を開けた時のかほり。あきらかにドイツ車やアメリカ車、イタリア車とは違う。
インテリアのデザインもなんともシックでクール。アイボリーと濃紺のツートンのレザーは色は地味だが、そのカッティングの妙で見た目は派手。さらにステッチがアイボリーというのもお洒落だ。
右の写真のとおりヴァンテージは2シーターながらも、シートバックに十分な幅と深さのあるスペースがある。これならハンドポーチとかショルダーバックだけでなく、ヴィトンのボストンを2つぐらいは余裕で置けそう。
この広さを見るとインテリアのパッケージングを変えるだけで、2+2にもできたんじゃないかと思える。
シートに座ると営業のK氏はにこやかに「私は同乗いたしませんので、お友達とお二人でご試乗してきてください。」と。なんともうれしい配慮。K氏のホスピタリティはなかなかどうしてそつがない。お言葉に甘えて同行の友人をパッセンジャーに乗せ、クラッチを切ってエンジンスタート。クラッチは想像していたより軽くストロークは浅い。重さは997と同じ程度だけれどストロークは初代TTや987ボクスター同等か。
ギアは左奥にリバースがあるポルシェタイプだけれど、プッシュリバースではない。でも1速とリバースの間にはゲートがあり、シフトミスすることはなかった。
1速に入れて、ゆっくりとクラッチミートしていくと半分ぐらいのところでつながった。あれ?アイドリングでスタートしようとしたらエンストしそうな気配???
でも、ちょっとアクセルをふみ気味でミートするとスルスルと前に出る。そのままアクセルを踏んで加速したところで自分が3速でスタートしたことに気がついた;;;つまり3速発進できるほどの低速トルクがあるってことか(笑)
走り出してまず感じるのが、タイトでダイレクトな印象。右ハンドルのMTは、夏に2トントラック運転したことを除けば、おそらく5年ぶりになるけれど、違和感はない。そのぐらいドラポジはよくて、シートの前後とステアリングの前後だけできっちり決まった。
とはいえ、さきほど乗ったスーパーレジェーラに比べれば足回りはストロークがあって乗り心地は悪くない。ステアリングのレスポンスも非常にタイトで、きり始めからススっと頭が切れていく感じだ。
休日で車の流れが少ない青山一丁目界隈をエンジン回転4千回転程度まで、軽く流すが十分に早い。エクゾーストノートは、低く太い音に抑えられていて心地よい。「お好きな道を好きに走ってきていいですよ」という営業のU氏の言葉に甘えて、青山一丁目から信濃町
方面へ向かう。
以前雑誌のレビューで、シフトフィールがイマイチと書かれていたが、私が乗ったこのモデルでは、そんな印象は受けなかった。ストロークはそこそこに ありカッチリしてはいないけど、ゴリゴリとかぐにゃぐにゃした感じはなくスコスコと軽くスムーズに入るし、ニュートラルもわかりやすい。
エンジンのレスポンスがよい。ふけ上がりが軽いとかではなく、アクセルの踏み具合に対するトルクの出方がリニア。また4000回転を超えたところのエクゾーストは、ガヤルド同様にフラップが開くため、かなり野太くてワイルド。V8ならではの音の太さはZ8と似てた。でかいエクゾーストのまま、またしても西麻布方面へ(笑)。
首都高の高架に音が響いたこともあって、交差点で信号待ちしてる人たちが振り返る。ガヤルドでも走った例のS字を同等以上の速度で抜けるが、アンダーは微塵も感じさせず、スムーズに頭を左右にいなして、オンザレールで駆け抜けた。フロントミッドシップ&トランスアクスルの恩恵で頭が軽い。
リアのトラクションは通常のFRよりも911などのRRに近い印象なのは、トランスアスクルならではか。雨の中、積極的にスロットルを開けて試乗したけれど一度もスリップすることはなく、DSCの介入をうけなかった。
低速ではごつごつ感があった足回りも3速全開で走りだすと芯の通ったしまった感触で、ステアリングを握る手にもロードホールディングの状況がわかる。ちなみに試乗車のタイヤはBSのRE050で、これはZ8にも履いてるけれどトラクションが良くFRやRRには向いてる。このタイヤとのマッチングも悪くない。ただ、これよりもコンフォートよりのタイヤに変えたら、乗り心地はよくなるんじゃないかとも思った。たとえばピレリのロッソとか。
ブレーキもいい。初期タッチがガツンとこないエキスパート仕様のリニアな効き味は扱いやすく自分の好みだ。ぬれた路面でもABSが効く寸前までのコントロールがしやすいし、渋滞でもギクシャクしない。
30分ほど走り回ってディーラーに戻ると、まだZ8の査定を続いていたので、引き続きATモデルの試乗をお願いした。営業のK氏は快諾すると地階のカーポートから、あたかも艦載機が空母のプラットホームにでてくるようなかっこよさで車をリフトアップしてだしてくれた。
2ペダルMTの試乗車は、ボディカラーがダークシルバー。この色になっただけで車の印象がぐっと変わる。ブルーの時に感じたマッシブな印象はうすれて、低く鋭く感じるから不思議だ。
ブルーのボディカラーはインテリアがクール&シックだったけれど、このガンメタの渋いボディカラーには、艶やかなレッドのインテリアが与えられていた。さしづめシャークスキンのスーツの裏地に赤のシルクサテンといったところ。
赤い内装で室内が明るく見えるためなのか、ブルーの内装に比べて、ダッシュボードのボリューム感が増した印象をうける。早速シートにすわりMTと同じようにエンジンスタート。
乗り込むときに営業のK氏から、ATの簡単なレクチャーをうける。
「ダッシュボード上に、ニュートラルとドライブモード、リバースのボタンがあります。Dモードに入れていてもパドルでシフトするとDモードは解除されてMTモードになりますから、Dモードに戻すときはボタンを再度押してください。
ニュートラルは、左右のパドルを引いてもOKです。それから、このATにはクリープがあります。1速にいれたままで強くブレーキを踏んでいればクリープは維持されてますが、ブレーキを踏む力が弱いと、安全のために自動でクリープが解除されニュートラルになります」
教えられたとおりブレーキペダルにしっかりと踏みつけてDモードボタンを押す。。ゴツッという短い音が背中のトランスアスクルから聞こえて、車が前に行こうとする力がかかるのがわかった。
ゆっくりとペダルをはずすと、スルスルとクリープで車が前に出る。感触としてはDSGと似ている。Dモードで走り出すと、トルクフルなエンジンのキャラクタを生かした早めのシフトアップで高いギアに上げてギクシャク感をうまく消してる感じだ。ランボよりさらにスムーズだ。
走っていて気になるのは、信号待ちの列について車間距離をゆっくりつめている時、半クラッチをつないでいるからだと思うが、リアのトランクアスクル付近からこもったゴロゴロという音が聞こえること。エクゾーストがおとなしい回転数だから余計に目立つ。まあ、些細なことでこの車の魅力をスポイルするほどではない。
MTモデルと同じルートを同じような速度で走ってみた感じでは、2ペダルMTでも運動性能や操縦性にはなんら遜色がない。強いて言うならば、重量がふえたからかMTモデルより足回りが心持ソフトに感じたぐらいだが、個体差かもしれない。2ペダルMTのクリープとDモードのコントロールのよさもあって、正直これぐらいの感触なら2ペダルでもいいかもしれないと思った。
MT、2ペダルMTと乗り継いで感じるのは、とにかく気持ちいい車だということ。おそらく今まで自分が乗ってきた中で一番相性がいい。曲がっても止まっても、まるで長いこと乗ってきた車のようにしっくりとなじむ。ATの試乗の時点で車のサイズの見切りは十分できているし、ブレーキやアクセルのフィーリングもつかめた。
ここまで短い時間で肌が合ってしまったから、本当にこの場で判子を押して乗って帰りたい衝動にかられた。5年前に初めてTTクーペに乗ったときに感じたのと同じ感じ。(といいつつZ8は本当に試乗後、判子押して帰ってきたっけ)
ディーラーに戻ってきてからお約束のお見積もりをいただく。ランボに比べてればずいぶんと安い(笑)。試乗したオプションてんこ盛りのブルーのMTモデルで乗り出し1700万。とはいえ、ちょっとやそっとで判子を押せる金額じゃないのでよかった(誤爆)
実際買うなら、ロードスターだし。ロードスターはプラス150万。この150万は結構高いハードルかもしれないな。
クーペのスタイリッシュさにはかなわないけれど、トップを閉めた状態のコンパクトな感じも、あけたときのスリム感も他のロードスターモデルにない魅力がある。
実は帰り際にわかったことだけれども、この展示されていたロードスターも実は試乗車両だったとのこと。うーん、2ペダルMTのモデルの試乗はせずにこちらに乗ればよかったと後悔。
ちなみに、このトランクは、アストンの内外装の見本がすべて詰まった代物。これを見てオーダーをする日がいつかは来るのだろうか・・・。(ちなみにフルオーダーだと納車まで8ヶ月)
というわけで、いずれそのうちロードスターに再試乗することを約束し、後ろ髪をぐいぐい引かれつつ赤坂を後にした。
とはいえ帰り道Z8のハンドルを握ってあらためて感じたのは、アルミフレームならではの乗り心地のしなやかさ。これは、やっぱり他には得がたい魅力。上がりの車としてもっと年をとってからもこの車は楽しめるだろう。
そんな身勝手なことを思いながら家路を急いだ。
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