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2008年11月12日 (水曜日)

【クルマ】A4Cに見る、かつてのAudiデザインの魅力(外装編)

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このデザインがすでに5年も前のものだと見る人が感じることは少ない。クルマに疎い知人や友人の多くがアウディの新型車だと誤解する(笑)。見慣れない車種であることとあわせて他に類をみないシルエットだからだろう。

2003年は、前アウディのデザインディレクターの最後の年であり、ある意味で20世紀アウディデザインの円熟期だったと自分は思っている。これ以降、アウディのデザインディレクターはデシウバになり、それまでの面の織り成すシンプルモダンなシェイプ重視のデザインからプレスラインを多用しドレープを多く持つラインディティール重視のデザインにシフトしてしまった。

※11/13 大幅に加筆修正しました。

シェイプ重視のデザインとラインディティール重視の違いを簡単に言えば、シルエットでみて、その造形の特徴が見て取れるか否か。

A5

今のアウディ車の特徴は、シングルグリルだったりキャラクターラインだったりするけれど、それらはシルエットではまったく見わけられないから逆光や暗がりでは特徴がない。デシウバ自らが最高のデザインと自画自賛するこのA5にしても、下のようにドア下のプレスラインを消し、ヘッドライトの意匠をつぶしただけで、インフィニティのクーペに見えてしまうほど、シルエットは凡庸なのだ。

さらに手のひらアイコンのあるあたりの、あからさまに折り曲げられたウインドウラインの雑な処理が目に余る。

A50

下のボルボC70や335iを見ればわかるとおり、両者ともウインドウラインは一筆書きの一本の連続的なラインで引かれてるのが分かる。ここがクーペのデザインの勘所なのだから。

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昨今美しいと評判のそのC70だが、ドアの中央ちかくまで伸びるAピラーが長いために前後のバランスに苦労しているのがわかる。さらに美しくないのが、メタルトップの最大の欠点であるトップの継ぎ目。どう言い訳しても継ぎはぎに見える。そもそもメタルトップはこの部分から雨漏りしやすい欠点があることを、どのメーカーも話したがらないね(笑)。

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A5よりずっときれいなシルエットを持つ335iクーペ。BMWのクーペの特徴たるルーフからトランクリッド先端が下がって見えるラインのつながりが特徴的だから、ドアノブ付近のラインやドア下端とボディ底面の折り返しのラインが見えなくても、このルーフラインのシルエットだけでBMWのクーペであることはすぐにわかる。

さてさて、これぐらいでデシウバデザインのクオリティについての難癖(笑)はこれぐらいにして、かつてのアウディデザインの魅力について話をもどしたい。

私は、A4Cのオーナーになるまで、このクルマのデザインの魅力をオープンカーであることだけだと勘違いしていたが、身近なクルマになって気づいたのが、オープンカーである以前に2ドアクーペとしての魅力だ。

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横から見ると、この2ドアクーペセダンのA4では感じられなかったウエッジシェイプが効いたサイドシルエットであり、ノッチバックの2ドアクーペとして直線と曲線がきれいに作られているのがわかる。また、それを際立たせているAピラーとウインドウ下側をつなぐアルミ仕上げのトリムのラインがあることで、全体のシェイプが明確になっている。

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また車室内から外を見たときの、このクーペのウインドウラインが美しい。直線であるAピラーの先端から緩やかな放物線をえがいてリアフェンダーにつながるウインドウのラインは、Bピラーがない開放感をうまく魅せている。やはり、このクルマはカブリオレを名乗らず、ドロップヘッドクーペと呼ぶべきかもしれない。

こういう随所の直線と曲線の組み合わせとあわせて、このころのアウディデザインの匠は、平面と球面のつなぎ方も秀逸だった。それが顕著なのがリアエンドだ。

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トランクリッドの平面部分に対して円筒形に丸められたテールエンドのデザインは先代A6で確立されたと思うけれど、円筒形の使い方にこうしてみてみると明確な違いがあるのが分かる。

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先代A6はA4Cとは異なり、リアウインドウの末端からトランクリッド先端を地面に向けて角を丸めているのが特徴だった。このあたりは同時期のTTのテールエンドのデザインにも踏襲されるのだけど、空力的にはイマイチな処理のためA6もTTも後に空力対策としてトランクリッド上に小さなスポイラーを跡付けされることになった。 R0016043

A4Cは、それを考慮してかトランクリッド上面は完全に平面としておきながら、リッド先端をがわずかに上側にカーブさせている。秀逸なのは、このう わぞりのカーブを露骨に見せないために、トランクリッド上面先端からナンバープレートに向けてテールエンド丸めたうえで、左右にも緩やかにラウンドさせた こと。

A6が横方向に置かれた円柱のようなトランクリッドのデザインだったのにたいして、A4Cは縦に置かれた円柱をトランクのラインで水平面に切り、さらにその切り角を内側に丸めるように処理されているのだ。

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両車は一見すると似て見えるのに、よく見れば、A4CがA6に対する改善的デザインアプローチであり、これを引き立たせるようにリアフェンダーから トランクリッド面のカーブにシナジーさせたAピラーからリアウインドウ下まで回りこむアルミのトリムのラインに、デザインディレクターのクオリティの高さ を実感する。

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リアエンドのデザインでデザインワークの変遷を感じさせるのが、テールライトユニットをむすぶライン処理。上の写真を見てのとおり、TTはテールライトユニットの縦方向のラインとユニット中央の左右を結ぶようにデザインされたトランクリッドのラインがあり、その下にナンバープレートがぶら下がるように配置されている。この直線的なラインがなんとも斬新なデザインを作り出しており、A4にもこのデザイン処理が施されていた。

TT以前にデザインされている上記のA6にはそのようなラインはなく、むしろトランクリッドエンドにアルミトリムを入れてトランクリッドの縦方向の曲線を強調しているから、発売時期を考えれば、TTのデザインでそれまでにはなかった曲面を直線で切り取るという斬新なデザインワークが確立され、後発のA4も踏襲したと取り入れられたと考えられる。

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ちなみに、これがセダンのテールエンド。A6で確立されたボディコーナーに立体的に配置さされたテールライトの造形はすばらしい。しかし改めて見比べるとA4Cがテールライトの形状もトランクリッドの処理もまるっきり異なっているのに気づく。B6A4は上記A6のデザインとTTのデザインマナーの延長にあったのだけれど、A4Cはそれをさらに昇華させたのかもしれない。

ちなみに、このあとB7A4を見ると・・・・。

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トランクリッドのデザインを変えたからテールライトもいじったのだろうが、トランクリッドのラインとテールライトのラインがシナジーせずラインが複数になってしまってる。しかもライトユニット中央を結んだラインのデザイン意図が正しく理解できてないから、なんとなく残したうえにあろうことか、その上におかしな形のライトを乗っけた(笑)。

これのおかげでトランクリッドの縦のラインとライトユニットを結ぶ横のラインの意味がまったくなくなってしまったのだけれど、これでも続くB8に比べればまだましだった。

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何もいわずとも分かるぐらいに、B8のテールエンドのデザインは無残なものになってしまっている。トランクリッド上面のラインも、テールライトユニットのラインも、トランクリッドのラインもまったく何のシナジーもなく、ばらばら。

B6で立体的で造形的だったトランクリッドとテールライトのデザインが、ただの平べったいシールみたいなものになってるだけでなく、さらに酷いのがナンバープレートの処理。だだっ広いトランクリッドになんのデザイン意図もなく、ただ真ん中においたって感じだ(笑)。

こうして比べてみるといかに03年以前のアウディデザインが緻密で造形的だったかが分かるはず。最近のデザインは安易で平面的であることがわかるだろう。

フロント周りにも同様の曲面と平面の組み合わせの巧みさがわかる。

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この角度から見ればわかるとおり、フロントは円柱から切り出したラインをベースに上端と下端を丸めることでシンプルな曲面を作り出した。グリルのラウンドのラインとライトユニット上端のラウンドのラインが連続的につながってるのが分かる。

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このフロント周りのデザインをみればその違いは一目瞭然。グリル上端のラインとライト上端のラインには整合性がないからとりあえず角をつないだだけ。またライト下端については、バンパーやナンバープレートとの関連性もつけられず浮いてしまってる。

同様に自慢のLEDのライトのラインも全体のデザインにおいてなんの役割ももたず、単純にアイラインになっているだけになってしまった。各パーツのディティールに凝ったばかりに、トータルとしてのデザインのつながりが切れてバラけてしまった典型例だろう。

LEDライトは、BMWのイカリングに対抗できるアイコンが欲しかっただけだろうが、イカリングのアイコンとしての秀逸さ(大きさに左右されずあれを見ればBMWとわかる)にくらべて、なんと安易なことか。LEDの車幅灯つけてれば、他のメーカーのクルマも含めみんな同じに見えるだけだろうに。

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A4Cデザイナーがディティールにこだわったと思うのが、このホイールのデザイン。TTなどにも付いていた、6スポークのリバースタイプのホイールはこのころのAudiのアイデンティだったのだけれど、A4Cのこのホイールのスポークは見てのとおり、ほんのわずかだけどスポークにエッジが付いてる。TTにも同じような6本スポークのホイールがついていたが、あれはまったく逆で、スポークの上面がリムより高くなっていた。些細なこだわりだけれども光があたった時に影がでて、平面的なホイールのスポーク部分にラインが見えるのが狙いなのだろう。

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あとは、A4CのアイコンともいえるアルミカラーのAピラーだろう。前Audiカブリオレからのデザインの踏襲だけれどセダンやアヴァントと一線を画す大事なデザインキーになっていると思う。先日のRS6の試乗でも感じたけれど、赤系のボディカラーとアルミニウムシルバーのマッチングは他の色よりもいいと思う。

内装編に続く

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コメント

クア太郎さん>
5速ATだとやっぱりちょっとつらかったですよね。デザイナー変わらなければ、B7ってA4株の延長線上でフェイスリフトしたんじゃないかと思いますね・・・タラレバですけど。

投稿: ta_tsu | 2008年11月19日 (水曜日) 18:37

B7,B8と比較して、B6A4のデザインは優秀だったな~と思います。
乗り潰すつもりなら、B6を手放すことは無かったのですが、
・社用車で車検前の更新
・Sローンの55%買い取り保証
・6ではなく、5速AT
・1.8Tのパワー不足(社用車でROMチューンが認められない)
ということで手放してしまいました。
B6A4を見かけるたびに、美しい車だったな~と思ってしまいます。

投稿: クア太郎 | 2008年11月19日 (水曜日) 14:32

>結局、申込書が来ませんでした(笑)

あれまー。うちは今週頭ぐらいにワイナリー便りとしてきましたよ。申込書って言うようなものはなくて、ワイナリー便りの一枚の一番したにちょこっと申し込み内容がかいてあり、メールでの申し込みです。だから苗木番号さえわかれば申し込めます。18日締め切りです。

のちほどメールしますね。

投稿: ta_tsu | 2008年11月14日 (金曜日) 11:30

月末のワイナリーの件ですが、結局、申込書が来ませんでした(笑)。来ないまま締切になっちゃいそうで、今回は縁が無かったものと諦めます。

なので、ピザ屋さんとかta_tsuさんお薦めのところにしましょうか!

投稿: mouton | 2008年11月14日 (金曜日) 10:53

サンシャインは高いしサポート悪いからお勧めできないです(笑)。いくら年式が高くて距離が少ないといってもあの値段は高すぎです。うちは保証付きアプルーブドで乗り出し350ですよ。だから自分は二度とあそこでは買いません。

多少距離多くても、ここのほうがいいですよ。http://www.carsensor.net/usedcar/detail/CU0002944138/index.html
車検もほとんど2年付いてるから、これを業販で地元のAudi水戸にひいてもらって認定中古車にして保証つけてもらうのがベストかと。おそらく350万前後でおさまるはず。

いずれにしろ月末にうちのに試乗してみてから考えてくださいな~♪

投稿: ta_tsu | 2008年11月13日 (木曜日) 12:56

ロペではなくサンシャインの間違いでした!!
欲しい~(笑)

投稿: mouton | 2008年11月13日 (木曜日) 11:42

moutonさん>
A4C本当にいいクルマだと思います。他のA4とはいろんなデザイン部分も含め明らかに違うクルマです。A4が持っていた実用車てきな安っぽさが微塵もありません。

ロペの実車も見に行ってますが、とてもきれいでした。あと練馬のクルマやが出してる水色の奴も良かったです。うちはオーナーに赤!って宣言されたので、この色になりましたが自分の車だったら水色を買ったと思います。

走行性能も意外に良い(まもなくアップしますけど)ので本当にお買い得な気分で満たされてます(笑)

投稿: ta_tsu | 2008年11月13日 (木曜日) 11:06

A4株、今が買い時なんですよね。
ロペの濃紺なんていいかな?っずっと悩んでたりします。

投稿: mouton | 2008年11月13日 (木曜日) 10:59

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